ああ、わたしのこれまでの人生は、今日、この日のためにあったんだって。その瞬間、まるでオセロの黒い列が、端っこから一気にパタパタと白く変わるみたいに、辛かった過去がキラキラした大切な思い出に変わるのよ。
大事なことほど小声でささやく あらすじ
身長2メートル超のマッチョなオカマ・ゴンママ。昼はジムで体を鍛え、夜はジム仲間が通うスナックを営む。名物は悩みに合わせた特別なカクテル。励ましの言葉を添えることも忘れない。いつもは明るいゴンママだが、突如独りで生きる不安に襲われる。その時、ゴンママを救ったのは、過去に人を励ました際の自分の言葉だった。笑って泣ける人情小説。
ジムに通う5人の物語とスナックのオカマ
この物語はジムに通う5人の登場人物と、ジムにいながらスナックを経営しているママのお話です。
登場人物の5人にはそれぞれ渾名(あだな)があります。
笑いながらダンベルを上げるケラちゃん、歯科医師のセンセー、謎の美少女ミレイちゃん、広告代理店の社長のシャチョー、シャイな高校生のシュン君。
そして、スナックを経営しているオカマ、ゴンママです。
それぞれの登場人物の過去や今の悩みがとても共感できる素敵なお話です。
カクテル言葉
カクテル言葉をご存知ですか?
花言葉は聞いたことがあるかもしれませんが、カクテル言葉もあるそうなのです。
この物語ではゴンママが登場人物にカクテル言葉を届けています。
スナックのママに人生相談をして、カクテル言葉をもらえて、こんな日常理想ですね。
そもそもスナックって行ったことないかも。
誰か面白いスナックがあったら教えてください。
スナックで働くカオリちゃんの存在とゴンママ
スナックにはカオリちゃんと呼ばれる女の子がいます。
カオリちゃんとゴンママの過去のお話が一番好き。
少しだけ心に刺さった言葉を紹介しますね。
あなたが生きられるのは、いまこの瞬間だけなのよ。過去と未来を思い煩っても、それは無駄なだけ。
(中略)
辛い過去になんてとらわれないで、未来の不安もぜーんぶ忘れて、いまこの瞬間だけをしっかりと味わっていきなさい。それが、禅の「幸せに生きる極意」なのよ。
夢はね、必ず叶えなくちゃ駄目なの。(中略)
夢を叶えた瞬間にきっとカオリちゃんは思うはず。ああ、わたしのこれまでの人生は、今日、この日のために合ったんだって。その瞬間、まるでオセロの黒い列が、端っこから一気にパタパタと白く変わるみたいに、辛かった過去がキラキラした大切な思い出に変わるのよ。
大事なことほど小声でささやく 感想
『大事なことほど小声でささやく』
森沢明夫オカマのゴンママが経営する「スナックひばり」には、心に色々なものを抱えながら生きている人達が集まる。
家族でも友達でもない誰かに、心の内を見せた時、想いを込めて、優しく、ささやくように、言葉を紡いでもらえたら…。#森沢明夫#読書 pic.twitter.com/JfICcEl2dj
— ルゥ (@mzmt_305) December 24, 2020
家族でも友達でも誰かだからこそ話せることってある気がする。ぼくにとってはTwitterのフォロワーさんってそれに近いのかもって思いました。
『大事なことほど小声でささやく』 #森沢明夫 著#読了
もう、どの章もクスッと笑えるのに、気がついたら泣けちゃう。心の浄化にピッタリです。心の栄養剤のような作品でした。#のベルズ#本好きな人と繋がりたい pic.twitter.com/wJOnXjJwKR— チエ@本好き (@4gtcnOAIBxWVlv7) January 17, 2021
「心の栄養剤」って言葉がすごくピッタリだなと思いました。
解説にもいい話を書く難しさが書かれていたので、ぜひ解説も読んでみてください。
『大事なことほど小声でささやく』森沢明夫
スポーツジムに通う人たちを描いた連作短編集です。そのジムに通いつつスナックひばりを営むゴンママが様々な人の心を癒します。
はじめ筋トレなんて興味ないんだけどなと思いながら読み始めましたが、すてきな言葉が多く心に刺さりました。#読了 pic.twitter.com/cTOvPEZtFK
— ちい (@milkcocoa1919) June 30, 2021
「筋肉ってね、男と違って正直だから、あたしを騙したりしないのよ。」ってゴンママの言葉を思い出しました。筋トレのお話は最初だけですよ〜(笑)
まとめ
この作品の「時計の秒針の音」の表現の仕方がとても好きです。
チ、チ、チ、チ、チ…。
この表現に、いろんな感情を込められる森沢さん、すごいなぁと感激でした。
あの音ってほんと不安になりますよね。
森沢さんとは同じ千葉県出身で、映画『夏美のホタル』ではぼくの地元が撮影場所となっています。
どこかで会ったら作品やTwitter見てますとお伝えしたい。
森沢さんの作品、もっと読みたいと思いました。
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