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第一回あたらよ文学賞に応募してみた タイトル『受験』

仕事・作品

第一回あたらよ文学賞に応募してみました。

2023年7月31日が締切。

応募総数は496作品もあったそうです。

一次選考が8月末におこなわれたのですが、ぼくの作品は選考に残りませんでした。

惜しい作品にも入らなかったですね。まぁ、そんなもんでしょう。

今回の目標は「小説を完成させて応募する」でした。

「形にする」って大事だなと思うので、それができただけでも大成功です。

約8,000字。

テーマは「夜」。応募条件は3,000~15,000字。

あまり文字数を気にせず書いたら、ちょうど収まったって感じです。

恥ずかしいですが、このままお蔵入りしても何も意味がないので、公開します!

10分くらいで読めると思いますので、興味のある方、ぜひ読んでみてください。

では!

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受験

1章

「今が大事な時期だからな。明日はここの日本語訳から進めていくので、ちゃんと予習しておくように」

授業が終わるチャイムが鳴り、英語の野田先生が授業を締める。

号令係が、めんどくさそうに「きりーつ、れー」と号令をかけ、みんな一斉に席を立上がり、シーンとした空気からざわざわした休み時間独特の時間が流れ出した。

「祐太、今日10時にDbDやろーぜ。今日はそんなに課題多くないから遅くまでできるっしょ。いつものグループで!」

「おっけー、10時ね」

クラスも部活も一緒の太一はよくゲームの企画をする。最近4人同時接続のゲームがたくさんリリースされていて、ゲームに詳しい太一は面白そうなゲームをみんなに共有してくれる。LINEで通話をしながらゲームをしてると、すぐ日付が変わってしまって気がついたら夜中の2時なんてよくあることだ。週末課題も今日やっちゃいたいし、昼休みの間に明日の予習しないとな、と、祐太は今日の予定を頭の中で立てる。

先週共通テストが終わった。先輩たちはこの共通テストの結果で進路を変えたりしているらしい。共通テストが終わったことで、2年生の俺たちにもう受験生なんだぞという無言のプレッシャーが学校にいるだけで伝わってくる。「今が大事な時期だから」どの教科の先生も言ってくるし、今は3年生の0学期だと言ってくる先生もいて、なんだよそれって思う。今が一番大事な時期だって言ってくる人に聞きたい。大事じゃない時期はいつだよ。

祐太はそんなことを考えながら、次の体育の授業のために着替えを始めた。

 

2章

 

「祐太チェイスもうちょい伸ばして!解読もうすぐ終わるから!」

「こっちももうすぐ終わりそう!祐太頼む!」

「こっちは今解読始めたからもう少し時間かかりそう!」

「任せとけ!このハンターならあと30秒は稼げる!」

チェイスゲームはその場の判断力、相手のプレイイングスキルを見抜く観察力、仲間との連携など、集中力が必要だ。マップの把握やスキルを使うタイミングなど、事前知識も欠かせない。学校がある日は弁当を食べながら、みんなで実況者のプレイを見て勉強している。この試合は比較的余裕で勝利した。

「もう0時か。どうするもう寝るー?」

太一が気を遣って声をかける。やめようとは言わないけど、この言葉がお開きの合図だ。

「今日はこの辺にしとくかー」

「りょーかい」

「おっけー」

みんなゲームをやめ通話だけが続く。

「マジで受験めんどくせーよな。みんな志望校とか決まってんの?」

あまり受験の話はしないのだが、気になったので聞いてみた。

「俺、指定校推薦使う予定。行けるところに行こ〜って思ってるよ」

「俺はN大に行ければどの学部でもいいや〜って感じ」

「みんな、そこまで考えてんの!?俺なんも決まってねーよ!とりあえず理系科目は無理だし国立も無理だから私立文系は決まりだな」

学校からは夏くらいから進路志望調査とか色々書かなきゃいけなかったけど、まだみんなふわふわしてるんだなって感じ。

「祐太はー?」

と、太一が聞いてくる。

「どこ!その大学!って思われたくないから、知名度あるとこ行きてぇよな」

みんなに合わせておんなじようなことを話す。

「もう受験勉強とかしないでさ、ずっとこうやってゲームしてたいよな。俺らけっこううまいし、YouTubeとかで稼げたりしねーかな」

「それなー。てか学校の課題多くね?プラスで受験勉強とか無理だわ」

「受験で使わない科目とかほんとなんでやらなきゃいけねーんだよって感じ。来月も模試あるじゃん。模試も土曜日一日潰れるからやなんだよなー」

学校に対しての愚痴が止まらない。朝は早いし、部活や塾があると夜も遅い。会社勤めの父よりも早く家を出て遅く帰ってくることなんてよくある。高校生はかなり忙しいのだ。

「まあ、まだ3年生でもないし、部活とか文化祭とか、俺らはまだ高校生エンジョイしないとな。またゲームやろーぜ!じゃ、おやすみー!」

LINEの通話も切れ、夜中0時に静寂が訪れる。

俺はこの時間が好きだ。

ゲームを終えた後、脳は興奮していて、すぐに眠ることができない。太一は睡魔に襲われてうとうとし出し、意味のわからないプレイングをすることもあるのだが、俺はそんなことはほとんどない。むしろこの時間が一番目が冴えている。だから昼間授業中に爆睡しちゃうこともあるんだけど。

外はめちゃくちゃ寒い。だけど、ゲームをした後は窓を開けて星空を見ながら外の空気を部屋に入れる。この時期の夜は空気が澄んでいて新鮮な気持ちになれるのだ。窓のサッシにつく水滴。部屋から漏れる光をバックに、自分の口から出る白い息。冬はゲームをするときに指先を冷やさないように気をつけるのだけれど、終わった後は外に向かって両手を突き出す。指先が冷んやりする感覚、鼻から冷たい空気が肺に入っていく感覚、この時期にしか味わえないこの感覚がとても好きだ。

通話が切れた後も、ゲームのことを考えるときもあるし、仲間と連携してクリアできた時の達成感に浸っているときもある。ほんとにあいつらとゲームしてるのは楽しい。これは学校じゃ味わえない感覚だ。

「受験かぁ」

祐太はぼうっとしながら数分外を眺め、体が冷えてきたなと感じたタイミングで布団に潜った。

 

3章

 

E判定。

思っていたよりも全然点数が取れなかった祐太は、その日模試の結果のことしか考えられず何も頭に入ってこなかった。もうすぐ3年生になるというこの時期に、E判定という絶望的な結果に不安を隠せない。

「祐太ー!模試の結果どうだったー?」

太一がニコニコしながらやってくる。

「全然できなかった。最悪」

「ナカマー。俺もよくなかった」

俺は内心かなりダメージだったけど、こいつはどう思ってんだろう。ヘラヘラしてるフリをしつつ、心を読み取ろうと太一の表情をじっと見てしまった。

「祐太は塾も行ってんだろー?模試の対策とかしてくれんの?」

「俺が通ってるところは自習がメインだからあんまり向こうから対策しようってことしないんだよね」

祐太が通ってる塾は小さな個人塾で、CMで見るような大手の塾とは違く、塾が用意したテキストを各自で進めていき、わからないところがあると教えてくれるというスタイルだ。自分のペースでできるし、中学生のときから通っていたのでそこで勉強をする習慣が身についている。田舎の小さな塾なので、人数も少なく小学校の同級生しかいない。もともと勉強自体はそこまで嫌いではなく、むしろ楽しく取り組めていた方だったので、気持ちがすごく楽だった。同じクラスのヤツは夏期講習が充実してたり、カリキュラムががっちり決まってる塾でガリガリやったりしてるらしいが、祐太にとっては今の塾が一番自分に合っていると思っている。

「そうなんだ。俺も塾とか行ったほうがいいかなー。でもなー、今の学校の課題で精一杯だしなー」

「俺はちょっとゲームやめて本格的に受験勉強頑張ろうかな」

「えっ!祐太、そんなに今回の模試やばかった感じ?」

「…うん。太一悪りぃな。ちょっとこれから夜勉強するわ」

「…そうか…。わかった」

太一とはずっと一緒に部活もしてゲームもして遊んできた仲だ。部活ももうすぐ引退して、ゲームもしなくなったら急に太一の繋がりが切れるんじゃないかって思い始めてきた。

 

4章

 

3年生に上がり、部活も引退。ついこの前までヒートテックを着てたのに、今ではもう半袖にYシャツを真夏の格好をしている。最近の気候は変だ。春をすっ飛ばして急に夏みたいな日が来たと思えば、梅雨の時期にまた冷え込んだりする。男子はブレザーを脱いだだけのような感じがするけど、女子の制服は一気に変わる。気温だけじゃなくて視覚情報からも本格的に夏がきてるんだなと感じながら、祐太はYシャツの袖を捲る。

受験で使う科目は先生の話を聞いているが、受験に関係ない科目の授業は正直どうでもいいなと思ってしまう。赤点取らなきゃいいか〜という感じで授業にも定期テストにも臨む。3年生の前期までの成績が内申点に関わると聞くので、完全には気を抜けない。

「さて、やるか」

家に帰ってからは風呂に入りご飯を食べて、机に向かうようになった。この時期の夜、外はカエルの鳴き声が響いている。「ケッケッケッケッケ」と一匹鳴き始めるとそれに共鳴して何匹もまた同じ音を奏でるのだ。たまに地響きのような牛蛙の重低音がアクセントになり、勉強から意識を持っていかれそうになる。それでも日中につまらない先生の授業を聞いているよりも、自分の意志で机に向かっているこの時間の方が有意義に感じた。

2年生最後の模試は記述模試。3年生の最初の模試はマーク模試だったのだが、これもまた散々だったので、太一たちとのゲームはやめて、その時間に勉強をすることにした。何を勉強していいかわからなかったが、数学の問題が全然解けなかったので、高1の復習から始めることにした。あー、こんなのやったなと思い出しながらの勉強。よく英語と数学は積み重ねというが、本当にその通りだと思う。理系科目は難しすぎて無理と思っているが、文系でも数学を受験科目で使うところはたくさんあるので、やらなければならない。英語は夏までに単語を完璧にしないとそもそも長文も読めないと脅されている。国公立を受験しようとしてる人たちは本当にすごい。この時期から科目を絞るのはもったいないという声も聞くけど、俺は5教科7科目も勉強できないから私立文系で絞って、勉強をしていく。この日も気がついたら0時を過ぎようとしていた。

 

5章

 

太一たちとのゲームをやめてから数ヶ月、祐太の成績はちゃんと上がった。

祐太の学校では定期テストの結果の上位20名までが廊下に貼り出されることになっていて、ほとんど特進クラスの生徒が成績上位にいるのだが、その中に混じって祐太の名前が書かれている。今まで定期テストの上位に組み込むことなんてほぼなかったので、学校ではちょっとした噂になった。

「おい、祐太、お前すげーな!」

太一がいつものようにだる絡みをしてくる。

「まあな!俺ちゃんと勉強してっからっ!」

太一たちとのゲームをやめてから、祐太は本当に勉強に専念し、定期テストではちゃんと結果を残していたのだ。このころから祐太の生活リズムはかなり安定し、みんなでワイワイ盛り上がるような夜はなく、ひたすら机に向かう日々が続いていた。ご飯を食べ、お風呂に入った後、冷房の効いた部屋でする勉強が祐太の心を落ち着かせる。お風呂であったまった血液が一気に冷やされて無心になれるその時間が祐太は心地よかった。しかも結果が出ている。こんなに楽しいことはない。

「来週の模試もいい点数取るから見てろよな」

祐太は太一に自信満々に言い放ち、移動教室の準備をはじめた。

 

6章

 

季節はあっという間にすぎ、夜勉強をしている時間には鈴虫やコオロギの鳴き声が響き渡るようになった。もう冷房もいらないどころか、寝る前に窓を閉めないと明け方に目が覚めてしまうくらい、涼しいとても気持ちが良かった。

このとき、祐太は記述模試でもマーク模試でも、第一志望のW大の志望校判定でB判定を取っていた。ある日、塾の先生に「このくらいの時期になると、今まで部活とか習い事とかで勉強に専念できてなかった人が、部活を辞めて受験モードに切り替わって一気に成績上がったりするけど、そういう人いる?」と聞かれて「俺です」と答えた先生は「おぉ〜」ってリアクションだったけど、それくらい自信があった。なんでだと思う?って聞かれてちょっと考えた。いろいろ考えたけど出てきたのは「勉強したからです」だった。

そう、俺はやったのだ、勉強を。

中学くらいまではなんとなくやらなくてもそこそこの成績が取れていた学校の勉強。高校に入ってからは中学のときのようにはうまく点数が取れなくなったが、本気で取り組むとちゃんと点数が取れることがわかった。しかも、今、勉強が楽しいと思える。勉強自体も楽しいし、結果が出ることも楽しい。やればやるほど点数が伸び、他の人たちとも差が開く。スーパーマリオのスター状態のように、祐太は大学受験というゲームの中で最強モードにいるように感じた。

 

7章

 

年が明け、毎年大雪の影響で何かしらの事件が起こる大学入学共通テストを祐太はなんとか乗り越えた。そう、なんとか、乗り越えた。年末までずっと勉強を続けられていた祐太だが、年を跨ぐと同時に少しずつ集中して机に向かう時間が減ってきている。もうすでに指定校推薦や学校推薦などで進路が決まっている仲間がいることが、祐太の勉強に対するモチベーションを変えてしまったのだ。彼らはいま勉強なんかせずに遊んでいる。最後の高校生活を、「高校生」というブランドを楽しんでいる。今までの自分のキャラクターだったら、あっち側にいたんだろうなと祐太は思ってしまったのだ。楽しかったと思えてた受験勉強が、第1志望の入試まであと1ヶ月というところまできて、解放されたいという感情が出てくるほど祐太を縛り付けるものになってしまった。

祐太の受験の科目は国語、英語、数学。国語は現代文、古文、漢文、数学は数Ⅰ・A、数Ⅱ・Bとそれぞれ分かれている。国公立を受ける友達は共通テストが5教科7科目と勉強量がかなり必要だ。祐太はそんなにたくさんいろんな科目を勉強するのが無理だと最初から感じていたので、私立の文系を選択し、少ない受験科目で受けれるいい大学を志望したのだが、教科を絞ったからといってそれぞれの教科を極められるかといえばそういうわけではなかった。もちろん、ひとつの科目にかけられる時間は多い。しかし、時間があることと集中して取り組めることは違うのだ。

最初は無理だと感じていた国立組の人たちがどう効率よく勉強するかメリハリをつけて取り組んでいる姿を見て、羨ましくも感じていた。

「祐太、共通テストのできはどうだったんだ?やっぱり良かった?」

下駄箱で上履きから靴に履き替えているときに太一が話しかけてきた。クラスが一緒だったので、全然話さなくなることはなかったけれど、ゲームをやめてからは太一とやり取りをする機会は減った。太一は指定校推薦をもらって年末には進路が決まっている。

「まぁまぁかな。英語のリスニングもっと点取りたかったなー」

「リスニングってもう運みたいな感じしちゃうわ、俺。なあ、祐太、志望校の判定もめっちゃいいし、あと記述の勉強だけだろ?今さ、指定校推薦組でまたDbDやってるんだけど、もし余裕あるなら祐太も一緒にやらね?1人足りねーんだよ」

ゲームの誘い。

「共通テスト終わったばっかりでそれこそ記述用の勉強に切り替えないとなんだよ」

ゲームはダメだ。あの夜の時間をもう一度経験したら、楽しいに決まってる。

「共通テストご苦労様!記述に切り替えよう祝いってことで今日だけでもやらね?まぁ、無理にとは言わねーけど」

切り替え。さっき自分で切り替えという言葉を口にしたけれど、今まで祐太は受験モードから切り替えはしてこなかったことに気づく。もちろん切り替えずにずっと受験モードでいることの方がいいんだろうと思うのだが、長い間切り替えができていない自分を変えてみたいという気持ちも出てきてしまった。

「…んー、じゃあ少しならいいよ。ただ、最近起動してないからアップデートしないと」

「さすが祐太!サンキュー!21:00からやるからまた連絡する!」

太一は放課後クラスのやつとファミレスに行ってゲームの作戦を立てると言って走って下駄箱を後にした。

「…ふぅ」

靴紐を結びポケットから手袋を取り出し、マフラーを締め直す。

久しぶりのゲームにワクワクする気持ちがある一方、受験期間にゲームをするという罪悪感に気づかないふりをしながら祐太も家に向かった。

 

8章

 

第1志望のW大の入試まであと1週間。

「俺解読機の近くだから回すわ!」

「俺も回す!」

「祐太、またあのハンターだ!あのハンターなら祐太チェイスするの得意だろ?チェイス頼んだ!」

「オッケー任せろ!」

あれから祐太は、太一たちとまた定期的にゲームをするようになってしまった。今まで勉強に取り組んでいた夜の時間が、ちょうど1年前のこの時期のように通話をしながらゲームを楽しむ時間に戻ってしまったのだ。さすがに前のように深夜までやったりはせず、だいたい1時間くらいやって「じゃあ、この後俺は勉強する」と告げて太一たちより先に抜けるようにしている。しかし、その後シャーペンを握る気分にはなれなかった。またゲームを始めると、ログインしてるのが太一たちにバレてしまうので、ゲームはできない。時計の針が真上の方向で重なるまでずーっと動画をみたりSNSを見たりして過ごしていた。

みんなと一緒にゲームクリアのために挑んでるこの瞬間、自分は生きていると感じた。マルチプレイのゲームなので、仲間がいる。自分だけじゃなくて、仲間がいるということが勉強との大きな違いだった。受験勉強もゲームといえばゲームかもしれないけれど、ソロプレイのゲームで仲間がいない。仲間とゲームをしている時間は受験勉強というソロプレイゲームから解放されているような気持ちになれた。しかも、この夜という時間がまたいい。昼間は明るくて誰かが見ているかもしれないと感じてしまうのだが、夜は解放している自分を覆い隠してくれる気がする。去年感じていたように、ずっとこの時間が続けばいいのにと思ってしまった。

あと1週間で俺の受験シーズンが終わる。

 

9章

 

「お兄ちゃん、ビールおかわり!あと、今日は寒くてあったかいやつ食べたいから熱々の揚げ出し豆腐もお願い!」

「ビールと揚げ出し豆腐ですね!かしこまりました!」

20歳になった祐太は居酒屋でバイトしながらフットサルサークルとテニスサークルに参加し、テキトーに講義に出席していた。

遊んで帰るときは終電が当たり前。夜21時からが祐太のメインの活動時間だ。高校生のときまではゲームという遊び方くらいしかしたなかったが、大学生になっていろんな人がいることに刺激を感じ、サークル仲間と飲み歩くようになった。店が閉まるまで飲み、数時間だけ漫画喫茶で仮眠を取って帰ってから昼過ぎまで寝るという生活も少なくない。いわゆる大学生をしていた。数年前、この時間に机に向かっていた自分が嘘のように感じる。

W大の入試の2日前、第2志望のM大の合否発表の日だった。合格。その結果を見たとき、祐太の中で何かがプチっと切れた。

もうここでいいや。

そこからもう受験勉強をやめてしまった。祐太はW大の入試に臨んだが、一科目目の英語の長文の内容が何も入ってこなく、途中退出。こうして祐太の受験勉強は幕を閉じたのだ。

22時。今日はたまたまバイトが早く終わり、もうそのまま帰ることにした。1月の夜はかなり冷える。マフラーがなかったら凍え死にそうだった。駅にはサラリーマンが多かったが、塾帰りの高校生がちらほらいる。電車を待つ列に並んでいると、たまたま前の高校生が見ている動画が目に入った。某塾講師の講義動画だ。

「最後の1ヶ月頑張れるかどうかで人生が変わるよ」

一瞬だったがこの字幕が祐太の脳を突き刺した。

最後の1ヶ月。

電車が駅に到着してみんな電車に流れ込む。席に座ったり、自分のポジションを決めるとすぐにスマホをいじり出す現代人だが、前の高校生はドアの近くに立ち、カバンから付箋だらけの単語帳を出して赤シートで隠しながら勉強を始める。この子は最後の1ヶ月頑張れるのかな。祐太は居酒屋やカラオケ店でライトアップされた駅前の通りを眺めていると電車が出発した。

 

あとがき

最後まで読んでいただきありがとうございました。

小説を書いてみた感想は、全然プロット通りに書けねぇってことでした(笑)

一応、形だけ、小説の書き方とか調べてプロットを作ったんです。

こんな感じかなってプロットを作ったんですが、それ通りに書こうと思うとなかなか手が動かなくて。

とりあえず書きたいこと書いてみよ〜って書くのが楽しかったですね。

塾の先生をもっとがっつり書きたかったんですが、塾と学校と家と3つの場面をうまく書くことができなかったんです。

なんか不自然になるくらいならなくていいやって。

あとは、誰が喋ってるのか、誰視点なのかを明記するのって難しいなって思いました。

第3者視点で主人公について書いてるのか、主人公の思考なのか、それを明記する言葉をどこに入れるのか、すごい難しかったです(もしかしたら、書き上げた今でも不明なところがあるかもしれないです)。

最後に、ぼくは文章を扱う仕事の中でも記者がいちばんやりがいを感じるんだなと思いました。

ポイントは「自分じゃない誰かがいること」と「その人が喜んでくれること」です。

冊子のお仕事も、仕事をくれている会社、取材対象者、地域の人、そしてそれを楽しめる自分ががいることで、続けることができたと思っています。

小説はずっと自分との闘いの感じがしましたね。

小説を書かずにはいられない!小説を書くことがとても楽しくて寝食を忘れてしまう!こういう人がいる中に自分は入っていけないです。

誰かがテーマをもっと絞って決めてくれたり、遊びで仲間内でやろうぜってなったりしたら、また書くかも。

文章を書くこと、文章を読むことは好きなので、これからも小説は読む専門として楽しもうと思います。

ここまで読んでいただきありがとうございました。

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