飽きた。もう卑屈にすっかり飽きたのだ。
生きていきたいのだ。この世界で生きていくしかないのだから。
正欲 あらすじ
生き延びるために、手を組みませんか。いびつで孤独な魂が、奇跡のように巡り遭う――。
あってはならない感情なんて、この世にない。
それはつまり、いてはいけない人間なんて、この世にいないということだ――共感を呼ぶ傑作か? 目を背けたくなる問題作か?絶望から始まる痛快。あなたの想像力の外側を行く、作家生活10周年記念、気迫の書下ろし長篇小説。
多様性とは
多様性とは、都合よく使える言葉ではない。自分の想像力の限界を突き付けられる言葉のはずだ。時に吐き気を催し、時に目を瞑りたくなるほど、自分にとって都合の悪いものがすぐ傍で呼吸していることを思い知らされる言葉のはずだ。
作中ではある登場人物の言葉で「多様性」という言葉がこのように表現されています。
ここ数年の間でよく聞くようになったこの「多様性」という言葉は、SNSではどのように使われているのでしょうか。
多様性 Twitter
Twitterで”多様性”と検索するとこのようなツイートが上がってきます。
「これからは多様性の時代だ」と中高年が叫んでも説得力はなくて。10代はとっくに多様性の時代を生きていて。いかに中高年をアップデートするか、という話になった。
— 常見陽平 (@yoheitsunemi) April 10, 2021
多様性。日本には、私もですが「皆で仲良く」を叩き込まれて育った人が多いです。しかし「多様性」は「皆で仲良く」とは全く違います。「皆がそれぞれそのままで生きる権利を認め合う」、その人が好きでも嫌いでも仲良くても悪くてもその人はその人として生きていい。それが私の理解する多様性です。
— maromiso (@maromiso1) April 6, 2021
小さい頃から家族の多様性を教えるのは本当に大切なことだと思っていて、そのスティグマを植え付けるのは大人や社会なんだと改めて感じた瞬間でした。前に同性愛者の先生がクラスにいた時彼女はオープンに子どもたちにそのことを話てくれたし、私も母親に育てられたことを子どもに話してる。
— はるか (@ReggioHoiku) April 10, 2021
10代はとっくに多様性の中で生きているって言葉にすごく納得ができました。
数年前と比べるとはるかに性別や年齢に関係なく、若い人たちはこの世界を生きていると感じます。
日本の教育では「みんなが同じ方向を向くことが正しく、そうじゃない者はノケモノにされる」。
個人の意見より全体の意見が大事とされていた村社会の時代や、アメリカ軍による日本を統率する教育方法としてよかったこの考え方も、今はもう古いように感じます。
人と違う生き方
耳をすませばのお父さんのセリフの重みが身に染みて分かるようになってきたD3の春。 pic.twitter.com/cTdNyMXced
— きょむたん(守護神Kyomu⭐︎Tan) (@Akyomutan) April 6, 2021
耳をすませばのワンシーン。
人と違う生き方はそれなりにしんどい。
朝井リョウさんの『正欲』は、この人と違う生き方を生まれながらにして感じている人のお話です。
作品の中ではこのような表現があります。
今からでも、生き抜くために手を抜くために手を組む仲間をひとりでも増やしておきたい。
自分のために。
そう、これはもう、いま孤独に苦しむ誰かのためになんていう奉仕の気持ちからくるのではない。
明日再びたった独りになっているかもしれない自分を、今から救い始めておきたいのだ。
すごく胸に刺さりました。
みんなのため、社会のため、困っている人のため、などではなく
自分のために。
視界に入ってきた時、どうしていいかわからなくなって脳がフリーズしてしまうような衝撃を受けました。
この作品で一番印象に残った言葉
「涙」
この一言で突然展開が変わるシーンのゾワっとする感覚が最も印象に残っています。
きっとこの作品をもう読んだ人ならわかるのではないでしょうか。
ぼくと同じような感情になった人がいたらいいなって思います。
まとめ
『推し、燃ゆ』とは違った現代風の作品というのが率直の感想です。
村田沙耶香さんの『コンビニ人間』やこだまさんの『夫のちんぽがはいらない』に近いジャンルかなと感じました。
ぜひ人と違った生き方、多様性、性、などに興味がある方は、読んでみてください。
また、ご感想や質問はこみーのTwitterのDMか質問箱にいただけると幸いです。
最後まで読んでいただきありがとうございました!
ではまた!
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