あの子は自殺なんかしないよ。自分のこと、大好きだもん。
傲慢と善良 あらすじ
婚約者・坂庭真実が突然と姿を消した。その居場所を探すため、西澤架は、彼女の「過去」と向き合うことになる。彼女はなぜ姿を消したのか。浮かび上がる現代社会の生きづらさの根源。圧倒的な指示を集めた恋愛ミステリの傑作が、遂に文庫化。
傲慢と善良 恋愛小説?ミステリ小説?
『傲慢と善良』を最初読み始めたとき、これはミステリ小説なのかなと感じました。
あらすじにも書いてあるように、突然婚約者の真実(まみ)が失踪し、彼女がどこにいるのか探す物語になっていたからです。
なぜ失踪したのかを調べていくうちに、マッチングアプリで付き合い始めた真実の過去が明らかになっていきます。
学歴、就活、婚活、親との関係、人間関係
現代社会のリアルな雰囲気が描かれていて、ダメージを受けながらページを捲るような感覚でした。
第一部と第二部の二部構成で物語は展開されます。
もし『傲慢と善良』を読もうと思っている人は、覚悟を持って読み始めてくださいね♪
傲慢と善良 こんな人におすすめ
恋愛小説というジャンルに区分されるかもしれませんが、少女漫画のような展開ではないので、現実的な恋愛小説が読みたいと思っている人はおすすめです。
この作品は、親子関係がとても強く描かれているので、お子さんがいる親世代の人たち、特に中高校生くらいの大人になりかけている子の親世代には刺さるんじゃないかなと感じました。
婚活がテーマなのですが、いま婚活をしている人もおすすめです。
参考になるシーンと、グサッと刺されてしまうような場面があるので、ぜひ深く考えすぎずにこの作品を読むと楽しめると思います。
傲慢と善良 心に刺さった言葉たち
うまくいくのは、自分が欲しいものがちゃんとわかっている人です。自分の生活を今後どうしていきたいかが見えている人。ビジョンのある人。
結婚相談所のお母さんの言葉。これは婚活だけではなく、全てのことに当てはまりそうなことだなと感じました。
この人たちはー世界が完結しているのだ。自分の目に見える範囲にある情報がすべてで、その情報どうしをつなぎあわせることには一生懸命だけど、そこの外に別の価値観や世界があることには気づかないし、興味もない。
井の中の蛙ってやつですよね。外の世界に出ていくことって大事だなと改めて感じました。
真面目でいい子の価値観は家で教えられても、生きていくために必要な悪意や打算の方は誰も教えてくれない。
こういうのって自分で痛い目にあって学んでいくしかないんだろうなって感じました。人から学ぶものじゃないのかもしれない。
あの子は自殺なんかしないよ。自分のこと大好きだもん。(中略)
自己評価は低いくせに、自己愛が半端ない。諦めているから何も言わないでって、ずっといろんなことから逃げてきたんだと思う。
アドラー哲学の『嫌われる勇気』のなかで、同じようなことが描かれていたのを思い出しました。こうなってしまった人に手を差し伸べるのは、難しい状態になっているんだそうです。
そう、この小説はヘビーなのである。それは恋愛や婚活にまつわる紆余曲折が描かれているからーというよりも、何か、誰かを”選ぶ”とき、私たちの身に起きていることを極限まで解像度を高めて描写することを主題としているからだ。
解説の朝井リョウさんの言葉。『傲慢と善良』は選ぶ・選ばれる瞬間の残酷な決断が描かれている小説です。
傲慢と善良 感想
1週間かけてようやく読了。
途中読むのが苦しくなりました。理由は朝井リョウさんの解説にある通り、
「自分の中にある無自覚の傲慢さを探らされる」から。
恋愛、結婚、就職、学歴。様々な嫌らしさと向き合わざるを得ませんでした。でも、読んでよかった! pic.twitter.com/iuj9QU74AQ
— 札幌で本を読む (@JO4JpHeaSZTZj0Z) November 23, 2022
本当に読むのが苦しくなる作品です。
あのう…間違ってたらすみません。もしかして、辻村さんて「天才」ですか?『かがみの孤城』であれだけ感動させておきながら、腹を何度も刺してくるような物語を書くなんて…!
お陰で、自分がどれだけ善良ぶった傲慢さを持っているのかを知りました。
もう流す血も残ってねぇよ。 pic.twitter.com/fX8BKe0YXF— とも@読書垢 (@tomobook_panda) September 28, 2022
「もう流す血も残ってねぇよ」っていう感想がすごく好きです(笑)
見たくない聞きたくない現実を突きつけられる物語なので、痛いところをたくさん刺されます。
『傲慢と善良』辻村深月
「ささやかな幸せを望むだけ、と言いながら皆さん、ご自分につけていらっしゃる値段は相当お高いですよ。」善良さは誰かを選ぶ時、私たちを傲慢にさせてしまうのかもしれない。#傲慢と善良#読了 pic.twitter.com/3RipnOijum
— ℎ (@Wh1tes2) September 15, 2022
『傲慢と善良』というタイトルを表しているシーンですよね。
まとめ
この世の中に、「自分の意志」がある人間が果たしてどれだけいるだろう。(中略)
どこまでが自分で、どこからが社会なのか。どこまでが理性で、どこからが本能なのか。これまで私たちが選んできた何もかもは、果たして本当に自分の意思で選択してきたものなのか、名もなき大いなる流れの中で選択させられていたも多いのではないだろうか。
解説の朝井リョウさんのコメントです。
この言葉にすごく考えさせられてしまって。
今までの人生で、「自分で選択したもの」ってどれくらあるんだろうって、考えさせられてしまいました。
『傲慢と善良』は、このような問いがたくさん出てくる作品です。
ぼくはこの作品、今年読んだ本のベスト10に入る作品だと思っています。
ぜひみなさんも手に取ってみてください。
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最後まで読んでいただきありがとうございました!
ではまた!
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