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死にがいを求めて生きているの 朝井リョウ

書評

 

 

俺は死ぬまでの時間に役割が欲しいだけなんだよ。死ぬまでの時間を生きていい時間にしたいだけなんだ。

 

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死にがいを求めて生きているの あらすじ

植物状態のまま病院で眠る智也と、献身的に見守る雄介。二人の間に横たわる“歪な真実”とは?
毎日の繰り返しに倦んだ看護師、クラスで浮かないよう立ち回る転校生、注目を浴びようともがく大学生、時代に取り残された中年ディレクター。交わるはずのない点と点が、智也と雄介をなぞる線になるとき、目隠しをされた“平成”という時代の闇が露わになる―“平成”を生きる若者たちが背負う自滅と祈りの物語。

死にがいを求めて生きているの 平成の時代の「対立」

「螺旋」プロジェクト|特設ページ|中央公論新社
「螺旋」プロジェクト 「小説BOC」1~10号に渡って連載された、8作家による壮大な文芸競作企画。古代から未来までの日本で起こる「海族」と「山族」の闘いを描く。

『死にがいを求めて生きているの』は中央公論新社のプロジェクトで、朝井リョウ、伊坂幸太郎、大森兄弟、薬丸岳、吉田篤弘、天野純希、乾ルカ、澤田瞳子の8人の作家によって物語が描かれています。(敬称略)

「海族」VS.「山族」の対立を描く、共通のキャラクターを登場させる、共通シーンや象徴モチーフを出す、という3つのルールがあったそうです。

『死にがいを求めて生きているの』が描かれている時代は「平成」という時代でした。

「平成は『対立』を排除してきた時代」で、しかも排除した『対立』は見えなくなっただけであり続けていると朝井リョウさんは言います。

ナンバーワンよりオンリーワン、ありのままでいんだよ、という言葉の裏側にある絶妙な不快感を描いている作品でした。

死にがいを求めて生きているの こんな人におすすめ

『死にがいを求めて生きているの』はゆとり世代は共感できるお話です。

ゆとり世代とは、1987年4月2日生まれから2004年4月1日生まれの世代だそうなので、当てはまっている人はぜひ読んでみてください。

「ありのままでいいんだよ」、「そのままでいんだよ」、という言葉にどこか違和感を覚えている人は刺さる物語です。

螺旋プロジェクトを読んでいる人、平成の時代を象徴している小説を読みたい人、ぜひこの作品を手に取ってみてください。

死にがいを求めて生きているの 心に刺さった言葉たち

どの局も社会問題系ばかりで歯応えがない。セーフティネットから漏れた人たちとか最近はやりのLGBTとか女性の貧困とか…生きづらさ発表会じゃねんだよドキュメンタリーは。

 

生きづらさ発表会というフレーズがよかったです。いますよね、生きづらさを武器に攻撃してくる人。自分もそういう人間にならないように気をつけようと感じました。

 

いいんだよ、担ぎたくないなら、担がなくたって。本当は誰も神輿を担げ、だなんて言ってないんだよ。雄介が勝手に、自分の周りの誰かと比較して、そう言われた気になってるだけだ。担ぎたくないなら担がないでいいんだよ、担がない自分を認めてあげれば。

 

担がない自分を認めてあげられるようになるのにとても時間がかかりますよね。認められるようになったら生きやすくなるのかな。どうなんでしょうね。

 

俺は死ぬまでの時間に役割が欲しいだけなんだよ。死ぬまでの時間を生きていい時間にしたいだけなんだ。自分のためにも誰かのためにもやりたいことなんてないんだから、その時々で立ち向かう相手を捏造し続けるしかない。何かとの摩擦がないと、体温がなくなっちゃうんだよ。だから、邪魔すんな。お願いだから。

 

堀北くんの言葉なんですけど、とても共感できました。役割があった方が人間って動けるんですよね。しかもその役割を自分で作るのって大変。だからこうやって立ち向かう相手を作りあげる。

 

今、自分の人生経験から得た学びや気づきを還元したいとか言って金稼いでる奴、ゴロゴロいるんだぜ。ロクに社会人経験のない奴がさ、”自分”を仕事にしています、私がこれまでの経験から得た気づきを皆さんに伝えたいんですとか偉そうに語ってんだよ。でも、どいつもこいつも結局同じようなことばっかり言ってんの。一度地獄を経験して知った今そこにある豊かさとか、自分の心に正直に生きるとか、人と比べない生き方とか自分をメディアにするとか会社に属さず個人で生きるやらなんたらかたら。結局大した中身のない奴が他人に説けることなんてそれくらいしかないんだろうな。

 

これは本当に耳が痛い。刺さる。

 

勝敗も決めないようになったのも、順位の発表を取り止めたことも、科学的なエビデンスを重視するようになったのも、政治的に正しい方向へ変化してくことも、それ自体はとても素晴らしいことだと思う。でも、そのあとに[※ただし、すべて自己責任で対応してください]という見えないただし書きをつけていたのが平成という時代の闇だったと、私には感じられてならない。

 

見えないただし書きが暗黙の了解のように感じてしまいました。でももう今の若い人たちは、これを前提に生きている感じがします。平成が終わって令和の時代の若者はどう感じるのだろう。

死にがいを求めて生きているの Twitterでの感想

 

 

おっしゃる通り、生きがいと死にがいを考えさせられる作品でした。

 

 

本当に痛いですよね。それでもページを捲る手が止まらない物語をつくる朝井リョウさんが本当にすごいと感じました。

 

 

「集団の中にあるグラデーションを見逃さないようにしたい」という台詞が出てくるのですが、そういう人間になりたいなと感じました。でもその考えが、平成っぽいんですかね(笑)

 

まとめ

朝井リョウさんの作品は痛いところをめちゃくちゃついてくる印象があります。

今までに読んだ『何者』、『どうしても生きてる』、『正欲』、どの作品も読んでいていて共感する作品でした。

『死にがいを求めて生きているの』は巻末に特別付録として、朝井リョウさんのコメントが載っています。

どういう意図で『死にがいを求めて生きているの』が描かれたのかが記されていて、作家さんって本当にすごいなと感動しました。

他の螺旋プロジェクトの作品も読んでみようと思います。

 

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