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どうしても生きてる 朝井リョウの短編集

書評

 

 

痛いときに痛いって大きな声で言えることが、気持ちいんだよ。
痛いときに痛いって、限界のときにもう限界だって、もう無理だって大きな声で言っても驚かない相手がひとりでもいる空間に、いたかったんだよ。

 

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どうしても生きてる あらすじ

死んでしまいたいと思うとき、そこに明確な理由はない。心は答え合わせなどできない。(「健やかな論理」)尊敬する上司のSM動画が流出した。本当の痛みの在り処が写されているような気がした。(「そんなの痛いに決まってる」)生まれたときに引かされる籤は、どんな枝にも結べない。(「籤」)等鬱屈を抱え生きぬく人々の姿を活写した、心が疼く全六編。

全ての話が心を抉られる

『どうしても生きてる』の目次はこちら。

健やかな倫理
流転
七分二十四秒目へ
風が吹いたとて
そんなの痛いに決まってる

どの話も、現代に生きる人間のなんともいえない部分が抽出されている物語です。

社会には自分の弱みや本音を言えずにくらいしている人がたくさんいるんだなって、朝井リョウさんの小説を読むと痛感します。

付箋だらけになってしまうほど、共感してしまう言葉が多かった作品なので、ぜひ映画化して欲しいなと思いました。

どうしても生きてる こんな人におすすめ

『どうしても生きてる』は6つの話から構成されている朝井リョウさんの短編小説です。

長編ではなく、短編の刺さる物語が読みたいと思っている人にはぴったりだと思います。

また、全ての話がハッピーエンドってわけではなくスッキリしないので、課題を突きつけられた状態で物語が終わる作品が好きな人は、おすすめです。

いい意味でリアルな物語なので、現実世界に起こりそうな物語が好きな人もハマるんじゃないかなと思います。

どうしても生きてる 心に刺さった言葉たち

それぞれのストーリーから刺さった言葉を抜き出しました。

「継続して調査しておりますので、また何かありましたらご連絡ください。」という呪文によって引き続き解決されないことが明らかになるだけの会議。何の意味があるんだろうと思いつつ、その時間にも給料が発生しているという幸運を絶対に手放すもんかと強く誓っている自分もいる。

健やかな論理 p31

 

みんながなくなったほうがいいって思ってるものNo.1かもしれない会議だけど、同時に同時になくなって欲しくない時間No.1かもしれないですね(笑)

 

物語を考える自分を超えて、自分に嘘をつかずに生きるって腹を括ってる風な自分を好きになっちゃったんじゃないの?

流転 p96

 

若いの頃の自分が一番聞きたくない言葉ですね。腹を括ってる風な自分ってのがほんとに痛い。

 

集中力が持続しない若い視聴者に向けて整えられた、たった七、八分の動画。何のためにもならない動画。だけど、それらを観られる昼休憩の時間が、自分の命を二十四時間ずる必死に延ばしてくれる、最後のてのひらのような気がした。

七分二十四秒目へ p149

 

その時間が積み重なれば、月に何時間になるのか。でもその時間がなかったら、仕事なんでできないメンタルなんじゃないかって思うと、不思議ですね。

私は、スマホを持ち込むことも誰かのユニフォームを鷲掴むこともしない。だけど、何もしないということで、誰かが破ったルールの上を、快適に歩いている。

風が吹いたとて p209

 

気づけているだけいいのかもしれない。ほとんどの人が自分が快適に歩ける理由を知らない気がする。

 

人間には多分誰にとっても誰でもない存在として、思ったことをそのまま言える時間が、必要なんだろうね。

そんなの痛いに決まってる p248

 

誰にとっても誰でもない存在になってみたい。

 

新しい人間を雇うときに重要なポイントは、経験でもスキルでもなくて、プライドのなさだと思うよ。自分の人生がこんなところで終わるはずない、って気持ちが一番厄介だし邪魔になる。

籤 p301

 

ドンピシャにぶっ刺さってて、すぐに付箋貼った言葉です。プライド。邪魔だけど、ないと生きられないですよね。

どうしても生きてる 感想

 

 

『日常で蓄積されていく、自分では抗えない「負」の出来事』って表現できるのすごいなと思いました。人間は誰しもこんな負の出来事と日々戦ってるんだなと痛感します。

 

 

 

作品を読んで負の感情が湧き出てくるため、生きている人間が美しく尊いと感じることができる作品。なんて素晴らしい作品なんでしょう。刺さる。

 

 

 

すべてが自分の立場と重なるわけじゃないのに、共感してしまうってすごいですよね。しんどいときに読むのは控えたほうがいいと言う人もいたので、読むときのコンディションにはご注意を。

まとめ

『どうしても生きてる』の感想をまとめるのめちゃくちゃ時間がかかりました。

いつもは付箋の数ってそこまで多くならないのですが、この作品は付箋だらけ。(借りた本なので、借りた人の付箋も合わさってます)

しかも文脈や、物語の前半があるから後半のこの言葉が刺さる!など、ブログで伝えきれない言葉も多かったので厳選がとても難しかったです。

いつもより長くなってしまって、文字ばばかりですみませんでした。

本屋大賞に朝井リョウさんの『正欲』がノミネートされていますが、もし『正欲』が好きって感じた人は、ぜひこの『どうしても生きてる』も読んでみてください。

ご感想や質問はこみーのTwitterのDMか質問箱にいただけると幸いです。

最後まで読んでいただきありがとうございました!

ではまた!

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