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怒り 吉田修一

書評

 

 

結局、大切な人ができるというのは、これまで大切だったものが大切ではなくなることかもしれない。大切なものは増えるのではなく、減っていくのだ。

 

 

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怒り あらすじ

整形した殺人犯・山神はどこに? 房総の港町で暮らす愛子、東京で広告の仕事をする優馬、沖縄の離島へ引越した泉の前に、それぞれ前歴不詳の男が現れる。(上)

山神一也は整形手術を受け逃亡している、と警察は発表した。洋平は一緒に働く田代が偽名だと知り、優馬は同居を始めた直人が女といるところを目撃し、泉は気に掛けていた田中が住む無人島であるものを見てしまう。日常をともに過ごす相手に対し芽生える疑い。三人のなかに、山神はいるのか? 犯人を追う刑事が見た衝撃の結末とは!(下)

怒り ミステリー?サスペンス?ヒューマンドラマ?

殺人事件の犯人が逃走。

警察は指名手配をしますが、犯人はずっと捕まらず、そのまま時が過ぎ去ります。

そして、舞台は東京、千葉、沖縄。

それぞれの物語に謎の男が現れます。

犯人はいるの?いないの?実はみんな同じ人?誰?という疑念を常に持ちながら、それぞれのエピソードを読み進めるという作品です。

怒り こんな人におすすめ

『怒り』には訳アリな登場人物が多く登場します。

同性愛者の男性、成人している娘がいるシングルファザー、母が夜逃げをし沖縄にたどり着いた女子高校生。

それぞれの立場の心理描写がとてもうまいので、同じような境遇にいる人は共感するのではないでしょうか。

また、犯人がいるとわかっているけれど、どの場所の誰なのかわからないという、面白いミステリになっています。

ミステリが好きな人も普段と違った体験ができる作品です。

『怒り』は実際にあった「リンゼイ・アン・ホーカーさん殺害事件」を参考にしたと作者の吉田さんはインタビューで答えています。

この事件では犯人が捕まっていますが、実際に2年7か月も逃亡していました。

『怒り』はこの事件の殺害の動機や逃亡生活を掘り下げるのではなくて、「逃亡中の殺人犯の、周りにいる人の反応」を描いている作品ですので、人間味がある作品ですので、そういった人間心理が好きな人は楽しめる作品だと思います。

怒り 心に残った言葉たち

女というのは不思議なもので、自分の男の権威でいくらでも魅力的になれる。

これ逆はないんですかね。女性の魅力度が高いと、男性の権威も上がる、みたいな。人類学とかそういう分野から分析してほしいです。

どんなに美味しそうな果物でも、小さな傷がついてしまえば腐るのは早い。男が去り、噂が広まってしまうと、愛子は「空手部部長の可愛い彼女」から「朝市にいるデブ」になり、大事にしてくれていた男を裏切ったという事実も加わって、運動一筋の若い男子学生の目には、汚れたものとして映るようになっていた。

 

厳しい…。でもこういう世界ってありますよね。特に学生のときはそれが全てって感じなので、ひっくり返ることもある気がします。

 

「俺はお前を疑っている」と疑っているやつに言うのは、「俺はお前を信じている」と告白しているのと同じことなのかもしれない。

この逆説感がたまらんです。

怒り 感想

 

手違いと書いていましたが、ぼくも何か手違いがない限りチャレンジできないですね。多くの人は上巻から読むと思うので、特殊な読み方ができて羨ましくもあります。

 

「信じようとして信じられないのは他人ではなくて自分」。自分に対して許せないことがあるのすごくわかるなと思いました。

 

余韻というか、とても考えさせられる作品ですよね。映画も気になります。

怒り まとめ

ぼくは2年前の読書会でこの作品を知ったのですが、もしそこでこの本と出会っていなければ、読んでいなかったかもしれません。

2年越しの伏線回収(笑)

登場人物がいろんな状況に置かれているので、全く飽きずに、多くのことを想像しながら読むことができました。

人を信じるってどういうことだろうと悩んだときにぜひこの作品を読んで欲しいなと思います。

 

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