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コミュニティの幸福論 桜井政成

書評

 

ただ、人はそんなに簡単に、面倒な「多様性」を引き受けられるものなのでしょうか。

 

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コミュニティの幸福論 あらすじ

「助けたくない, 助けられたくない」日本のあなたとわたし――身近なギモンや俗説の真相究明に挑んだ国内外の学術的研究を紹介しつつ, 家族や地域, 趣味・ボランティアのグループ, SNSやネットゲームといったあらゆる“コミュニティ”を取り上げて, 人と人との関わり合いを問いなおす。オンライン授業で満足度が高かった講義内容をもとにして書きおろした実況中継風テキスト。

コミュニティの幸福論

コミュニティという言葉を使う人ってなんとなく意識高い系みたいなイメージがありますよね。

コミュニティという言葉を使うのってあまり好きではないのですが、それを的確に表している言葉がないので使ってしまいます。

ご近所付き合いや自治会のような地域コミュニティならなんとなくイメージしやすいかもしれませんが、今ではオンラインサロンやオンラインコミュニティというオンラインでの繋がりを重視して活動している人もいます。

オンラインの場合、目に見えない繋がりなので宗教ぽいと怪しく感じてしまうこともありますよね。

『コミュニティの幸福論』では、オンラインやネットの繋がりを含め、コミュニティについて、社会や家族、ボランティや趣味について書かれています。

大学の講義でおこなったワークショップのことなども触れているので、今の時代の感覚も反映されいます。

複雑な論文のような文章ではなく、わかりやすく社会のことが書かれているので、スムーズに読むことができました。

コミュニティの幸福論 こんな人におすすめ

まちづくりや地域の活動をしている人は特にコミュニティという言葉に敏感だと思います。

コミュニティについて考えている人にとっては興味深い本になっているのでおすすめです。

ゲームやSNSなどの顔の見えない繋がりに楽しみを覚えている人もおすすめです。

オンラインサロンやオンラインコミュニティに所属・参加している人も楽しめると思います。

帯には書いてあってタイトルからは想像できなかったのですが、ボランティアに興味がある人はぜひ『コミュニティの幸福論』を読んで欲しいなと思いました。

助ける、助けられる、ということについて、民族性や社会についても書かれているので、おすすめです。

コミュニティの幸福論 心に残った言葉たち

日本は他者を信頼する「信頼社会」ではなく、よそものを排除して、ごく狭い身内の人たちだけを信用する「安心社会」なのだとしています。
また、信頼社会とは「相手の人格や行動傾向の評価に基づく、相手の意図に対する期待」が持てる社会のことであるが、それに対して安心社会とは「相手の損得勘定に基づく相手の行動に対する期待」しか持てない社会ともしています。

 

日本の文化ってよそ者に厳しいですよね。田舎で生まれ育ち活動しているので、とてもよくわかります。安心と信頼って似たような意味で捉えられそうですが、ここでは全く違う意味で使われているのでおもしろいです。

 

若者がネットの世界にこもるのは、親世代によるストリートやショッピングモールからの排除によるものだと指摘します。(中略)「選択肢がなかったら、オンラインに行くだけだよ」というのが少年少女たちの正直な気持ちだったのです。「直接的な対人関係を避けている」というような時々マスメディアがつくりあげる現代の若者像とは異なるのです。

 

マスメディアが作り出している若者像はとても大きいと思います。以前『男子劣化社会』という本を読んだときにも、ネット依存について同じようなことが書かれていておもしろいなと思ったので、興味ある方はぜひ読んでみてください。

男子劣化社会 男子は本当に劣化したのか?
男性は自分から女性を誘うことができなくなっている。こうすべきというはっきりしたルールはなく、ただ、しては行けないルールが山ほどあるだけだ。それをすれば、間違いなく悲惨な結果になるらしい…だったら、ごめん、ぼくはむしろゲームをするね。 男子劣...

諸個人が自分のアイデンティティ、生活史、恋愛関係・生活関係、雇用関係の「日曜大工」となる。

 

近代では社会で共有された大きな物語(いい大学、いい企業、マイホームみたいな)があったけれど、脱近代では小さな物語を各自が持つとされています。

ただし、注意書きに、自分の生活の状態に自分が責任を負うということが書かれており、このことを「個人化」と言っていました。

またまた別の作品の紹介になってしまいますが、朝井リョウさんの『死にがいを求めて生きているの』は「平成」をテーマに書かれている小説で、この辺の感覚が物語でうまく書かれているので、もし興味がある人は読んでみてください。

死にがいを求めて生きているの 朝井リョウ
俺は死ぬまでの時間に役割が欲しいだけなんだよ。死ぬまでの時間を生きていい時間にしたいだけなんだ。 死にがいを求めて生きているの あらすじ 植物状態のまま病院で眠る智也と、献身的に見守る雄介。二人の間に横たわる“歪な真実”とは? 毎日の繰り返...

 

助ける側の人はウエメセ(象徴的支配)にならないように気をつけなければならないということ。そして、助けられる側の人には助けを求められない(求めることが心理的負担となる)状況があるので、それを社会として、あるいはコミュニティとして解消する必要があること。

 

受け取る側の状況を想定して、社会としてコミュニティとしてその問題を解消することって本当に大切だなと思いました。そのためには想像力や知識が必要ですね。本を読んだり、いろんな立場の人と話して、身につけていきたいです。

 

日本では武道、茶道、華道といった伝統的な嗜みが「道」であることに準えて、レジャーに真理を追求しようとする姿勢がみられることがあります。

 

本気で趣味をするって日本人ぽいのかと感じました。無意識にやっていることだけれど、もしかしたらそれが文化になってることってありますよね。

コミュニティの幸福論 感想

「コミュニティ」のというキーワードから関連する分野のテーマが描かれているので、とてもおもしろかったです。

「多様性」という言葉が社会的に広まってきてるけど、それはいいけれど、人はそのめんどくさいものをそんなに簡単に引き受けられるの?という問いがとても良かったです。


助ける助けられるの関係でいうと、福祉に関わる人は読んでおくべき作品かもしれません。

 

コミュニティぎらいが『コミュニティの幸福論』を読む――富永京子さん・評|じんぶん堂
桜井政成さん(立命館大学教授)の著書『コミュニティの幸福論:助け合うことの社会学』(明石書店)は、家族や地域、趣味・ボランティアのグループ、SNSやネットゲームといったあらゆる“コミュニティ”を取り上げて、人と人との関わり合いを問い...

 

感想を調べているときに出てきた記事です。

コミュニティという言葉の抵抗感、個人化した社会だからこそ相手へ踏み込むことの難しさ、この記事だけでもたくさん議論することができることが書かれていて、いい記事だなと感じました。

コミュニティの幸福論 まとめ

地域コミュニティ、オンラインコミュニティ、子どもの居場所、時代によってコミュニティという言葉は在り方や考え方が変わってきてるなと感じています。

コミュニティで幸せに暮らしていくこととは、あなたの問題でありながら、あなた以外の人の問題でもある。誰かが幸せになれば別の誰かは不幸になる、というような、「ゼロサム・ゲーム」の世界ではない。

あなたが幸せならば誰もが幸せになる。

「はじめに」にはこのように書かれていました。

コミュニティ、人との繋がり、関係性、こういったキーワードが飛び交う中で社会人を経験してきて、これからもこのテーマについて考え続けて生きていくんだろうなと感じています。

この記事を読んだみなさんと一緒に議論もしたいです。

 

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