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護られなかった者たちへ 中山七里

書評

 

 

真っ当な行政機関のあるべき姿という定義は何なのでしょうか。国民のためにはどんな無理難題でも抱え込む組織ですか。それとも省庁の指示通りに運営して行政に破綻を来たさない組織ですか?

 

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護られなかった者たちへ あらすじ

「あなたにこの物語の犯人はわからない」―― 中山七里

仙台市の保健福祉事務所課長・三雲忠勝が、手足や口の自由を奪われた状態の餓死死体で発見された。
三雲は公私ともに人格者として知られ、怨恨が理由とは考えにくい。
一方、物盗りによる犯行の可能性も低く、捜査は暗礁に乗り上げる。
三雲の死体発見からさかのぼること数日、一人の模範囚が出所していた。
男は過去に起きたある出来事の関係者を追っている。男の目的は何か。
なぜ、三雲はこんな無残な殺され方をしたのか? 誰が被害者で、誰が加害者なのか。
本当に“護られるべき者”とは誰なのか
怒り、哀しみ、憤り、葛藤、正義……
万般の思いが交錯した先に導き出される切なすぎる真実――。

護られなかった者たちへ 生活保護の受給者と保険福祉センター

『護られなかった者たちへ』は生活保護と保険福祉センターを中心としたミステリ小説です。

国による生活保護への予算の削減によって、支援されるべき人が支援されていない現状に対して、大切なひとを失くしてしまった人や警察官の心情が繊細に描かれています。

立場や見方が変わると、人の評価は全く異なるということがこの物語では表されていました。

被害者、容疑者、ともに物語前半と後半で人となりが異なっているので、ぜひ見てほしいです。

護られなかった者たちへ こんな人におすすめ

公務員として仕事をしている人はぜひ見てほしい作品です。

読んでいて気持ちの良いものではないかもしれないですが、税金で仕事をすることについて考えさせられます。

会社や組織の仕組みに対し歯痒い思いをしている人もおすすめです。

本当に届けたい人に届けられない現状を変えようと、頑張って動いているある登場人物から勇気をもらえるのではないかなと思います。

社会問題が強い印象を与えますが、この作品はミステリ小説です。

こういうテーマのミステリ小説もあるので、ミステリ小説が好きな人にとっても面白い作品となっています。

護られなかった者たちへ 心に残った言葉たち

全くあんたら公務員ってのは本当にタチが悪いな。面倒なことや難しいことは後回しにして、簡単なこと成果が見えることから手をつけようとする。税金は取りやすいところから取る。年金はうるさいところから支給する。犯人を逮捕する前に家主のわたしを逮捕するなんて、言語道断だぞ。

公務員の痛いとこを突いてるセリフだなと思いました。

社会貢献なり社会保障は不景気の時ならば余計に機能しなけりゃいかん。景気が良くなる時には富裕層から恩恵を受けるが、不景気の時には逆に低所得の人間が割を食う。景気なんて軽々しく言うが、その影響で下層の人間は冗談でも何でもなく死んでしまう。いったい何のための社会保障なのかね。そんな事態に機能しないような社会保障なんぞ、絵に描いた餅にすぎない。

新型コロナウイルスの影響で、この言葉の意味を肌で感じた人が多いのではないでしょうか。

厚意とか思いやりなんてのは、一対一でやり取りするようなもんじゃないんだよ。それじゃお中元やお歳暮と一緒じゃないか。あたしやカンちゃんにしてもらったことが嬉しかったのなら、あんたも同じように見知らぬ他人に善行を施すものさ。そういうのが沢山重なって、世の中ってのはだんだんよくなっていくんだ。でもね、それは別に気張ってするようなことでも押しつけることでもないから。機会があるまで覚えておきゃあ、それでいい。

この言葉もっと広がってほしいです。優しい世界がいいですよね。

敵を作るより味方を作っておいた方がいい。味方が多い人間は強いよ。そして強い人間に盾突こうとするヤツは少ない。どっちが楽だと思う。

数が多いと強いって生物の根本的な部分ですよね。味方や仲間がたくさんいると本当に心強いです。

真面目な人間ほど、追い詰められると理解不能な行動に移りやすい。

これは、なんとなく、わかる。

護られなかった者たちへ 感想

みんな一生懸命だから辛いんですよね。

うまくないと生きれない、うまいと心がなくなる。
心は無くしたくないなと思ってしまいます。

 

社会保障の問題を自分ごとに考えるのは難しいですよね。自分なりの信念を持って生きていきたい。

まとめ

再犯するような囚人を養うのも、声の小さな貧者に出し渋るのも同じ税金だ。法律と歪んだ信条が護るに値しない者を護り、護らなければならない者を見て見ぬふりをしている。

届けたい人に届けられず、届いてほしくない人の元へ届くというジレンマ。

ボランティアや税金での活動に関わったことがあるので、とても共感できました。

世の中っておかしくね?って、学生のときよりも働いてみて実態を見た方が感じるんですよね。

『護られなかった者たちへ』でも、警察官が犯人の行動に共感しかけてしまうシーンがあります。

富とか名声とかに惑わされず、かっこいい大人になりたいです。

 

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