自分が存在した世界と、存在しなかった世界。そこにあるであろう、微細な差異。そこに生まれた、小さな小さな”差”こそが僕が生きてきた”印”なのだ。
世界から猫が消えたなら あらすじ
郵便配達員として働く三十歳の僕。ちょっと映画オタク。猫とふたり暮らし。そんな僕がある日突然、脳腫瘍で余命わずかであることを宣告される。絶望的な気分で家に帰ってくると、自分とまったく同じ姿をした男が待っていた。その男は自分が悪魔だと言い、奇妙な取引を持ちかけてくる。
「この世界からひとつ何かを消す。その代わりにあなたは一日だけ命を得ることができる」
僕の命と引き換えに、世界からモノが消えていく。僕と猫と陽気な悪魔の七日間が始まった。
世界から猫が消えたなら 失うことでわかる大切なこと
世界からひとつ何かを消す代わりに1日だけ命を得ることができる主人公。
逆に何かを消さなければすぐに死んでしまします。
自分で消すものを選べれば良いのですが、悪魔はそんな優しいことを許してくれません。
ちなみに主人公は最初に「そこの壁のシミ」と言っています。
それで寿命が延びたら嬉しいですよね。
しかし、今まであるものが消えるって、けっこう感慨深いものがあったり、考え出してしまうものです。
世界から猫が消えたなら こんな人におすすめ
『世界から猫が消えたなら』は「当たり前のもののありがたみ」を感じることのできる作品です。
個人的に物事がうまくいっている時にこそ、こういう話を味わうのがいいのかなと思います。
また、物語に生と死が根底にあるお話です。
そこまでheavyではないですが、生きることについて少し考えたいと思っている人にはおすすめの作品です。
あと、猫が可愛いので、猫が好きな人はおすすめです。
心に刺さった言葉たち
そのとき僕は気付いた。この気持ちが、学生時代に彼女からの電話を待っていたときの、あの気持ちと同じであるこちに。このすぐに伝えられないもどかしい時間こそが、相手のことを思っている時間そのものなのだ。かつて人間にとって、手紙が相手に届き、相手から手紙が届く時間が待ち遠しかったように。プレゼントは、物そのものに意味があるのではなく、そのプレゼントを選んでいるときに、相手が喜ぶ顔を想像している、その時間自体に意味があるのと同じように。
携帯電話を消したときに主人公が感じたこと。
現代人は伝えたようと思ったら、全く顔の知らない人にも自分の気持ちを伝えることができますからね。
携帯電話がなくなった世界、私たちは戻れるのかな。
観ていない映画、食べていない料理、聴いていない音楽、見ていない景色。
そう考えると、死ぬときに浮かぶのは、あるべき未来への後悔だ。未来なのに後悔という言葉はおかしいのかもしれないが、もし自分が生きていたらと思わずにはいられないことだらけだ。そのどれもが、いま自分が消そうとしている映画のように「あってもなくてもよいもの」ばかりなのだ。
人生最後になんの映画を見るか考えているときに主人公が感じたこと。
あってもなくてもいいものが、自分にとって最も大切なものだったってすごい素敵なことですよね。
でも自分が情熱を持って打ち込めることって意外とあってもなくてもいいものなんじゃないかなって感じます。
自由は、不安を伴う。
人間は、不自由さと引き換えに決まり事があるという安心感を得たのだ。
社会に出たときに一番最初に感じたことががまさにこれでした。
正解を常に与えられてきた学校生活から解放されたとき、何をどうしていいのかわからない。誰も何も言ってくれない。正解がない。今でも自分がすべきことが決まっていると安心して取り組むことができます。それが定まっていないとき、不安になります。
世界から猫が消えたなら 感想
世界から何かを消す事で余命が一日延びるという契約を交わすファンタジー風小説
文体も軽妙で暗重さはないが読み流した後にその言葉の放つ後光に息を飲む
数々の進言は生への訓示となり読後哲学書へと変貌する
死と同様避けられないものそれは生きる事である pic.twitter.com/eUlkmAeByo
— もっつー@読書好き (@YMotthu) May 21, 2021
「死と同様避けられないものそれは生きる事である」
素敵な感想だなと思いました。物語の設定上、生と死が根底にあるので、とても考えさせられる作品でした。
人はいつか死ぬ。それは数年後か、数日後か。もしかしたら明日もないかもしれない。今生きていることの希少さ、素晴らしさがわかった。
「大切なことは失ってから気づく」
よく使う言葉だけれど、この作品を読んで痛いほど実感。
積極的に生きていこうと思える作品。 pic.twitter.com/dNpu11tgpH— kiki@読書垢 (@kiki_booklog) April 11, 2021
「大切なことは失ってから気づく」はよく聞く言葉です。
日常で経験することはあまりないかもしれないですが、この物語はその感覚を与えてくれます。
あらためて、当たり前のことに感謝できるようになるのではないでしょうか。
世界から猫が消えたなら / 川村元気
映画でボロ泣きして原作も。両方良いけど原作推し。大して猫好きでない私が10選(15選だけど)に入れるくらいだから猫好きな人は絶対読むべき。そうじゃない人も読むべき。当たり前に存在するものが自分にとって如何に貴重で大切なのか。心がキュッとなる。#読了 pic.twitter.com/IOa6STn3Zk
— も ち 🥞 (@cadlm__) January 23, 2022
『世界から猫が消えたなら』は2016年に佐藤健さん主演で映画が公開されています。猫はこの作品では重要なキャラクター。『世界から猫が消えたなら』に出てくる猫の目線で描かれた物語、『世界からボクが消えたなら』という小説もあるほどです。これから『世界からボクが消えたなら』を読んでみようと思います。
まとめ
『世界から猫が消えたなら』は妹の本棚にあった小説で、映画がやっていることも知っていましたが、当時は特に見ようとも思っていませんでした。
勧められたわけではありませんが、自分で図書館や本屋さんに行って選んだ本ではありません。
たまにそんなふうに素敵な出会いがあるなと感じます。
アマゾンプライムで映画も観れたので、この記事を書きながら映画も観ました。
個人的には原作がおすすめです。
映画は泣かせに来てる感が強かったです!(泣いてしまいました)
ご感想や質問はこみーのTwitterのDMか質問箱にいただけると幸いです。
最後まで読んでいただきありがとうございました!
ではまた!
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