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書評:『殺人出産』村田沙耶香による生と死について考えさせる作品

小説

 

大丈夫ですよ。だって、私たちには殺人があるのだから。

 

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殺人出産 あらすじ

人は人生で4度、殺意を覚える–。芥川賞受賞作家、村田沙耶香の最大の衝撃作はコレだ!–今から100年前、殺人は悪だった。10人産んだら、1人殺せる。命を奪う者が命を造る「殺人出産システム」によって人口を保つ日本。会社員の育子には十代で「産み人」となった姉がいた。蝉の声が響く夏、姉の10人目の出産が迫る。未来に命を繋ぐのは彼女の殺意。昨日の常識は、ある日突然変化する。

10人産んだら1人殺せる世界観

村田沙耶香さんの小説はその世界観がすごいですよね。

「10人産んだらひとり人を殺せる」という世界。

育てる育たないかは別として、それだけの子どもを産めるって体力すごいなって思ってしまいます。

そして、その世界ならではの、「この人を殺すために10人産もう」という考え方がすごい。

世界の根底がひっくり返るような感じですよね。

こんな世界だったらくらいは考えるかもしれませんが、その世界が現実化したときにどうなるかまで想像して、物語を創造できる村田さん、さすがです。

出版社は講談社

『殺人出産』を出している出版社は、講談社です。

『東京リベンジャーズ』とか『ブルーロック』とか、『進撃の巨人』も講談社ですね。

小説だと貴志祐介さんの『新世界より』が有名ではないでしょうか。

2023年の12月に映画が公開された、黒柳徹子さんの『窓際のトットちゃん』も講談社です。

講談社ってフレーズは聞いたことありますが、具体的にどんな作品かと言われるとあまり出てこないですね。

書店で働いている人は出版社って意識すると思いますが、ぼくはBOOKOFFや図書館を利用することが多いので、出版社さんはあまりピンとこないのです。

最近ブログを書くときに出版社を書くようにしていて調べるのですが、知らないことがたくさんあって勉強になります。

著者の「村田沙耶香」のプロフィール

 

村田沙耶香さんは、『コンビニ人間』という作品で、2016年に芥川賞を受賞しました。

そこから有名になったんじゃないかなと個人的に思っています。

村田さんは「普通」や「性別」の根底を覆される小説を書いているイメージがあります。

小説もすごいのですが、エッセイを何冊か出していて、『となりの脳世界』は村田さんがどんなことを考えて生活しているのかがわかるのでおもしろいです。

こちらの記事では村田さんが小説を書くことについて語られているので、ぜひ読んでみてほしいです。

あらためて作家村田沙耶香ってすごいなと感じました。

『コンビニ人間』の芥川賞作家・村田沙耶香に聞く、いま読むべき1冊。「刷り込まれた幸せ」の外側へ
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『殺人出産』はこんな人におすすめ

村田沙耶香さんの世界観が好きな人はおすすめです。

SFのようなぶっ飛んだ世界観に興味がある人はぜひ読んでみてください。

逆に、殺人がテーマにもなる小説なので、そういう物語が苦手な人はあまりお勧めできないかもしれないです。

殺人が許容される世界に興味がある人にもお勧めです。

現代社会では、人を殺すことは悪いことになっていますが、昔はバンバン人が人を殺していましたよね。

フィクションですが、そういう世界を知っておきたいという人にもおすすめです。

『殺人出産』の心に残った名言たち

恋愛とセックスの先に妊娠がなくなった世界で、私たちは何か強烈な「命へのきっかけ」が必要で、「殺意」こそが、その衝動になりうるのだ。

命へのきっかけが殺人って、今生きているぼくたちの世界では考えられないですよね。こういう思考を表現できる村田さん、すごい。

殺そう。殺せばいいんだ。
この時、私の世界が逆転した。被害者だった私が加害者になり得るという理解は、衝撃だったし、新鮮だった。何より、殺せばいいんだ、という発想は私を救った。それを空想していると呼吸ができるようになったし、吐き気もおさまった。

生きているルールが変わるだけでこんな発想になれるのかと驚き。ただ、この発想は現代社会でも救われる人はいるかもしれないなって思いましたね。殺しちゃだめだけど。

突然殺人が起きるという意味では、世界は昔から変わっていませんよ。より合理的になっただけです。世界はいつも残酷です。残酷さの形が変わったというだけです。私にとっては優しい世界になった。それだけです。

殺したい人を合法的に殺せるようになって、それが合理的になった…か…。そういう世界もあるのかもしれないですね。今の社会だったら自分が離れるという選択肢から、殺すって選択肢が増えるんですもんね。

Twitterでの感想

村田さんの作品は定期的に読みたくなりますよね。わかります。

この未来、ありえなくないなって思わせるのが村田さんですよね。文学ってすごいなって思わせてくれます。

殺人が正義になる日は永遠に来てほしくないけど、正義の価値観が変わりゆくとき、古い正義に生きる人は悪なのかと言われると、なんとも言えないですね。

まとめ

人を殺したいって思ったことってありますか?

ぼくは人を殺すなんて考えたこともありません。

殺すどころか、揉め事やちょっとした口論で傷つくタイプです。しかも、自分が攻撃しても反動食らうタイプ。

トラブルが起きそうなら、自分が身を引こうって考えてずっと生きてきました。

この本を読みこの記事を書き、自分が人を殺したいと思うほど辛い思いをしてこなかった、恵まれた環境で生きてきた人間なのかもれしれないとも思いました。

実際、ある人が死んだら、いい方に進むこともあるんだと思います。

昔関わった地域で、「3代変わらないとこの地域は変わらない」って言ってる人がいて、確かにそういうのもあるんだろうなって、とても印象に残っています。

人が死なないと変わらないことってあるんだろうなぁ。

『殺人出産』は「生」や「殺すこと」ついて考えさせてくれる作品です。

作品としても短編集でページ数も多くないので、ぜひ気軽に手に取ってみてください。

村田沙耶香さんの作品は何冊か読んでいるので、他の作品もこちらに記載しておきますね。

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最後まで読んでいただきありがとうございました。

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