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書評:『ままならないから私とあなた』朝井リョウによる「論理」VS「感情」の小説

小説

 

恋ってその人じゃないとできないって思うもの、かも。

 

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ままならないから私とあなた あらすじ

先輩の結婚式で見かけた新婦友人の女性のことが気になっていた雄太。
しかしその後、偶然再会した彼女は、まったく別のプロフィールを名乗っていた。
不可解に思い、問い詰める雄太に彼女は、
結婚式には「レンタル友達」として出席していたことを明かす。 「レンタル世界」

成長するに従って、無駄なことを次々と切り捨ててく薫。
無駄なものにこそ、人のあたたかみが宿ると考える雪子。
幼いときから仲良しだった二人の価値観は、徐々に離れていき、
そして決定的に対立する瞬間が訪れる。
単行本に、さらに一章分を加筆。少女たちの友情と人生はどうなるのか。
「ままならないから私とあなた」

正しいと思われていることは、本当に正しいのか。
読者の価値観を心地よく揺さぶる二篇。

文春文庫より

ままならないから私とあなた 名言が溢れる「論理」vs「感覚」の物語

『ままならないから私とあなた』は2篇の作品が収録されています。

ぼくは後半の物語の方がとても印象に残りました。

後半の物語は簡単にいうと、「論理 vs 感覚」

「AI vs 人間らしさ」と言ってもいいかもしれません。

どっちもわかるー!てなって、読んでいてもどかしい気持ちになりました。

どっちが正しくて、どっちが正しくないとかじゃないんです。

どっちも正しいというか、どっちも存在してるんですよね。

ぜひ読んだ人と議論したい作品でした。

出版社は文春文庫

文庫
文庫。株式会社文藝春秋が刊行する単行本、文庫、新書・電子書籍のサイトです。作品の一部が立読みできます(一部例外もあります)。書店在庫検索、オンライン書店、電子書籍書店にもリンクしています。

『ままならないから私とあなた』の文庫は文春文庫から出版されています。

単行本は文藝春秋の出版です。

『ままならないから私とあなた』は文庫化にあたって、後半の物語に一章加筆されています。

ぼくは文庫本で読んだので後から加筆されていたことに気がつきました。

単行本しか読んでいない人はぜひ文庫本も読んでみてください。

著者の朝井リョウってこんな人

朝井リョウさん、1989年と平成生まれなんですよね。

有名な作品ってぼくの感覚だと『桐島部活やめるってよ』『何者』『正欲』があると思っています。

『桐島部活やめるってよ』は早稲田大学在学中に書いた作品らしいです。すごい。

2022年本屋大賞にノミネートした『正欲』は、2023年5月31日に文庫化し、同年秋には稲垣吾郎さん新垣結衣さん主演で映画化も決定されています。

どの作品でもグサグサ痛いところを突いてくることをテーマに物語を手がけている印象があるので、朝井リョウさんの作品、ぼくはとても大好きです。

朝井リョウさんについてもっと詳しく知りたい人はこちらから。

朝井リョウさんの作品いくつか記事にしているので、もし興味がある人は読んでみてください。

死にがいを求めて生きているの 朝井リョウ
俺は死ぬまでの時間に役割が欲しいだけなんだよ。死ぬまでの時間を生きていい時間にしたいだけなんだ。 死にがいを求めて生きているの あらすじ 植物状態のまま病院で眠る智也と、献身的に見守る雄介。二人の間に横たわる“歪な真実”とは? 毎日の繰り返...
どうしても生きてる 朝井リョウの短編集
痛いときに痛いって大きな声で言えることが、気持ちいんだよ。 痛いときに痛いって、限界のときにもう限界だって、もう無理だって大きな声で言っても驚かない相手がひとりでもいる空間に、いたかったんだよ。 どうしても生きてる /幻冬舎/朝井リョウ p...
正欲 多様性
飽きた。もう卑屈にすっかり飽きたのだ。 生きていきたいのだ。この世界で生きていくしかないのだから。 正欲 /新潮社/朝井リョウ posted with カエレバ 楽天市場 Amazon 正欲 あらすじ 生き延びるために、手を組みませんか。い...

ままならないから私とあなたはこんな人におすすめ

『ままならないから私とあなた』の前半の物語ではレンタルサービスの仕事がでてきます。

レンタルサービス業に携わっている人は考えさせらるかもしれません。

また、後半の物語では、AIがテーマに出てます。

クリエイターは読むと参考になると思います。

朝井リョウさんは若い作家さんなので、若い作家さんの小説を読みたいという方もおすすめです。

ままならないから私とあなたの心に残った言葉たち

誰にもわからないんだったら、私は、せめて自分で試したいの。試して、自分たちにどんな作用があるのか、ちゃんと知りたいの。

 

これをみたとき、『BLEACH』の浦原さんを思い出しました。
ナックルヴァールが
「3つの世界を潰した後に陛下が何を創るのかそれを見たいと思わねぇのか?」
という投げかけるのですが
「誰も見たことないものを創るなら自分の手で。それが科学者ってもんス」
って浦原さんが言うんですよ。科学者、いいですよね。ちなみにぼくはナックルヴァール派です(笑)

 

偶然だったから、愛おしいんだよ。
人と人との関係だけは、効率とかじゃないんだよ。それだけは絶対に合理化できないし、何も省けない。

 

いろんなことに対して、疑問を思っていた雪子がこのシーンだけは断言するんですよね。ここの2人のやり取りは激アツです。

 

向かった先が違うだけで、ふたりを突き動かす根本はずっと同じだった。違うのに、同じ。同じなのに、違う。ままならないからこそ、人は自己と他者を見つけ出すことができる。私とあなたがいるからこそ、「この世界」で人間でいられるのだ。

解説から好きな言葉を引用しました。ままならないって言葉の意味がちゃんとわからなくて、自宅にある講談社の辞書で調べたのですが、ままならないの「まま」って我儘の「儘」なんですって。あるがままとか仰せのままにとかのままですね。なので「ままならない」は思い通りにいかないことって意味なんです。「思い通りにいかないから私とあなた」。あらためて、いいタイトルだなと思いました。

ままならないから私とあなた Twitterでの感想

やってくれたな朝井リョウ!

すべてが効率よくなればいいかってことはないですよね。

「想像力」は文科省が定義するところの「国語力」の中に含まれているそうです。鍛えたいですね。

まとめ

『ままならないから私とあなた』は「論理 vs 感覚」という言い方ができるとお伝えしました。

ぼくは定期的にエレメンツコードという性格診断のツールを受けているのですが、いつ受けても論理と感覚両方のエネルギーがかなり大きく表示されます。

 

グラフでいうと、左が側の「火」が論理、右側の「水」が感覚のエネルギーです。

両方ともかなりのエネルギーを持ち合わせているので、今回の物語の薫と雪子、2人の言っていることがどちらもわかりました。

ちょうどこの本を読む前に、こみーはどっちっかって言ったら「火」と「水」どっちなんだろうねって話をしてたんです。

この本を読み、いろんな人に話しているうちに「どっちかに決めなくていい。どっちもあるから、今どっちのエネルギーを使っているのか認識していることが大事」という結論になっていないような結論が出ました。

どっちがいいとかじゃないんですよね。

この結論が出たとき、ぼくが好きな地域活動家の小松理虔さんの『新地方論』を思い出しました。

ぼくたちは「地方」というと、海と山と川とに囲まれた、自然が美しい、気のいいじいちゃんやばあちゃんがのほほんと暮らしている、というようなステレオタイプな地域を思い浮かべがちだ。そして、それと対置する形で、都合よく「都市」や「都会」や「グローバル」を考えてしまう。そうして二極化させて考えた方がわかりやすいからだろう。でも、実際には、完璧に「どちらか」に分けられるものなんてなくて、その間に、無限のグラデーションを身にまとった地方がある。その間で割り切れない複雑さを引き受けて、うじうじと考え続けるほかないよな、と思うのだ。(中略)うじうじと考えることが、とても豊かな時間になるということだ

これは「地方」と「都会」というわかりやすい二項対立ですが、今回の「論理」と「感情」の話にも当てはまるんだろうなと感じました。

本を読んで記録をしておくと、何か問題が起きたときに、あ、前にあの本で同じようなことを考えたなって思い出せるんですよね。

読んだ本をブログに記録すること、いい文章だなと思った部分を抜き書き帳すること、この習慣が活きた感じがしました。

3年もするとやっと効果が感じられる。

自分の中で出来事が繋がる。

そこから自分の言葉が生まれる。

以前読んだ近藤康太郎さんの『三行で撃つ』という本に書かれていた言葉です。

この本を読んだ時から、抜き書き帳をつけています。

今回の「論理」と「感情」の話で、偶然出会った本を記録することの大切さをあらためて感じました。

抜き書き帳を書き始めて2年が経ちます。

少しだけ、自分の変化を感じられて、嬉しかったです。

「どっちかに決めなくていい。どっちもあるから、今どっちのエネルギーを使っているのか認識していることが大事」という結論は、ただ読むだけではなく、自分がどっちにも振り切って動いたり、雪子と薫の物語に没頭したり、そういった経験があったからこそできたんだろうなって思いました。

これからも引き続き、うじうじ考えながら、どっちのエネルギーなのかを意識していこうと思います。

 

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最後まで読んでいただきありがとうございました!

ではまた!

 

 

 

 

 

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